防災グッズを備えよう~多機能防災グッズの勧め~

防災グッズを備えよう~多機能防災グッズの勧め~

防災グッズは知識や情報とともに備える

今回は、非常持ち出し袋や避難リュックに入れておくべき「防災グッズ」ついて詳しく紹介したいと思います。防災グッズに関しては地域の自治体などが発行している、防災マニュアルや防災マップなどに紹介されているので、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

2011年3月11日の東日本大震災以降は、防災意識も上がって、以前に比べると「防災グッズ」をすでにそろえたという人が、かなり増えたといわれています。ところが全国で開催される防災イベントや防災講座に来た人に尋ねてみると、とても残念だなと思うことが多々あります。

備蓄を進めるにあたって最も重要なのは、その「防災グッズ」にまつわる知識や情報をきちんと理解して、本当に必要で有効なものをそろえることです図1を参照してください。NPO法人プラス・アーツが被災者へのヒアリングを参考にした上で奨励している防災グッズのリストです。紙面の都合上、ここでは紹介している防災グッズの全てに言及できませんが、特に重要だと思われるものに絞り、具体的な知識や情報とともに紹介したいと思います。

被災地で役に立った本当の知識や情報が重要

一般的に流布している「防災グッズ」に関して、一般に信じられている情報と、被災者が実際の体験から得た情報には内容の食い違うものがいくつかあります。その最たるものが「ライト」です。一般的に、災害時の明かりとして「懐中電灯を準備しましょう」とうたわれています。しかし、災害時に本当に必要なのは「ヘッドライト」だと被災者の多くが語っています。理由は明確で、両手が空くからです。被災地では昼夜を問わず、けが人の救助活動や救援物資の運搬などを行います。被災直後に、電気がストップして真っ暗になってしまった街の中での、こうした作業には「ヘッドライト」が必要不可欠なのです。

一般的には防災グッズの代表的なアイテムとしてうたわれている「軍手」ですが、実際には「革製の手袋」の方が適していたといわれています。被災地での救援活動やがれきの処理の際に、鋭利なくぎやガラスなどが軍手を突き破り、手にけがをしてしまう可能性があるからです。水道が止まってしまう可能性が高い被災地で、けがをすると傷口の十分な洗浄ができないので非常に危険です。けがを未然に防ぐために、より丈夫な手袋が求められるのです。このように被災者の体験をもとに、本当に災害時に役に立つ「防災グッズ」をそろえ備蓄することが重要です。

多機能防災グッズのすすめ

もう一つ重要なことが、率先して「多機能」の「防災グッズ」をそろえることです。家の中の収納スペースや持ち運びする際の避難リュックなど、限られたスペースや容量の中で、一つの「防災グッズ」で災害時のさまざまなトラブルをクリアできれば、とても助かります。そこで、ぜひ用意してもらいたいのが「新聞紙」「ポリ袋」「大判ハンカチ」「レインコート」の4点です。

「新聞紙」は、前回のコラムで紹介したように骨折の応急手当て、大量の食器が必要になった際の紙食器の材料として活用できます。また、被災地で寒さを和らげるために、服の中に丸めて入れるという技を活用する場合にも活躍します。

「ポリ袋」も前回ご紹介したように、止血の応急手当てをする際、直接血に触れないよう手の保護用に使ったり、水道がストップした被災地では、新聞紙の紙食器にかぶせたり、調理をする際などに活用できます。少し大きめの「ポリ袋」であれば、水を運ぶ際に、汚れたバケツや段ボール箱にかぶせて水を入れる容器を作ることもできます。大きめの「ポリ袋」は加工すれば雨をしのぐポンチョ代わりになります。

「大判ハンカチ」は、崩れた家のほこりが舞う被災地で、マスク代わりになったり、止血や骨折の際に、応急手当ての包帯代わりにもなります。

そして最後の「レインコート」は、雨をしのぐことはもちろん、防寒着としても活用できるし、ほこりよけとしても使えます。被災したお母さんが子どものために準備しておいて、「とても重宝した」と証言している防災グッズです。

「質」にこだわった防災グッズの備蓄を

このように、被災者の声に耳を傾ければこれまでと違ったさまざまな情報や知識があることが分かってきます。そろえればいいという「量」の問題ではなく、そのグッズをそろえる理由を十分に把握し、具体的にどんなものをそろえかを問う「質」こそが重要なのです。「質」にこだわり、もう一度「防災グッズ」を点検してみてください。そして、まだ「防災グッズ」をそろえていない人は、ぜひこの機会にのリストを参考に、ご自身で考えながらそろえてみてください。